~ 歌詞でよむ初音ミク 2 ~ 原始人

「あんただって同じ学校だったじゃない」

タグはなくなっていますが、「みんなのミクうた」あたりでしょうか。とはいえ、童謡のようなゆるい曲調に、どことなくちょっと大人の切なさが両立している作品。曲・詞ともにハッチポッチPさんです。

 

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失恋したことを友達(ルカさんの声)に揶揄される女の子。友達は言います。「懲りない女だね」「少しは学習しなよ」。

 

ずばずばと物言うその友達は、彼女に「あんな都会のお洒落な男 あんたにゃ似合わない」とか「田舎モン」などと言い放ちます。味のある口調とためらいのない暴言に苦笑してしまいますが、そこまでは「タイトルの『原始人』って、その『田舎モン』の女の子のことかな?」と思うはずです。

 

しかしその彼女(ミクさんの声)は言い返します。「あんただって同じ学校だったじゃない」。聴いているほうはずっこけます。そうです、二人とも同類なのです。

 

口喧嘩していた二人は、サビで仲良く「あたしら原始人」と一緒に歌います。自然のなかで生きるのが好き。都会には憧れるけど長くいると息がつまる・・・。のびのびと開き直った自然体の二人が可愛らしくて、思わず笑ってしまいます。

 

同類だと分かったあとの2番では、彼女は友達に甘えています。「いつも付き合わせてしまってごめんね」「だけど恋だけはしょうがないじゃない 気が付けば惚れてるんだもん」。ちょっと幼い口調で、すぐにフラフラ影響されてしまう頼りない女の子という雰囲気がよく出ています。

 

口調こそ少し粗暴な友達のほうは、優しく「気にすんな あたしも楽しんでる」なんてさらっと答えて、どうせ死ぬまで切れない腐れ縁だと言ってあげます。だからこそ、なんだかんだお姉さんのような立場で、つい口を挟んでしまうのでしょうか。

 

2番は物語的には進行しませんが、二人の人物像や関係が浮かび上がっていく大切なパートです。そういう子たちだと思って1番を聞き返すとより味わい深くなります。

 

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こんなに面白くてゆるい曲なのに、なんとなく哀愁も感じるのはどうしてだろうと考えてみるのですが、それはやっぱり「あたしら原始人」という言葉の裏面に、都会でうまくいかない彼女(たち)のもがく姿が透けて見えるからではないでしょうか。

 

単に「自然が好き!」「田舎は最高!」という自己肯定の歌詞ではないところに、この二人への愛おしさを感じるのだと思います。