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~ 歌詞でよむ初音ミク 24-28 ~ Project DIVA 特集 (3) ___ どういうことなの!?/ Weekender Girl / ネトゲ廃人シュプレヒコール / 神曲 / 秘密警察

特集&企画

初音ミク -Project DIVA- f

 

DIVA特集も3回目になります。個人的にはこのDIVA f のパケ絵がいちばん好きだったりします。

 

24. どういうことなの!? (くちばしPさん)

 典型的な理系女子のミクさん。理系用語で出来上がったあたまのなかに、恋という理解不能な感情が割りこんできて困惑しているさまが歌われています。どうして「人という機械に思い馳せるのか」という疑問を抱く彼女は、まるで機械に対するように「君は何が好き?」「全部教えて」と一問一答を求めるのですが、当然ながらうまくはいきません。

 「局所解」「難解な式」「パズル」「答え合わせ」、そういった言葉では彼女の気持ちをうまく表現できるはずもないのですが、そのことも彼女は分かっていない様子。

 それゆえ「君は誰が好き?」などと考え始めてしまうと思考はうまく働かず、印象的なサビのとおり「どういうことなの!?」と繰り返すことしかできない彼女。それでも自分でも気づかないうちに「君の笑顔に(・・・)共起する」と言ってしまう姿がとても可愛らしいところです。

 

25. Weekender Girl (歌詞:kzさん / 曲:八王子Pさん)

 歌詞はkzさん、曲が八王子Pさんです。爽やかな楽曲に合わせるなら、「週末のときめくデートを心待ちにしている女の子」というふうに読めなくもないのですが、素直に歌詞を読めば、どうやら意外にも語り手はクラブガールのミクさんです。

 「ストロボ」「LED」「刺激的なライン」「プリズム」「走り気味のビート」「響くツイーター」・・・きらびやかな異空間としてのクラブ。そこで音楽に没入し退屈な日々を抜け出す時間を楽しみにしながら、「まだ真ん中」(=平日)のカレンダーと睨めっこしているミクさんの、いまにも体が浮きそうな感覚。クラブそのものを語らず、クラブに行ける週末を待つミクさんの心情を語ることで、自己解放としてのダンスフロアの空間がいっそう活き活きと描かれています。

 もちろんそうやって心情を通して対象を描く手法のおかげで、必ずしもクラブに限定されず、週末を待望している色々なシーンにも当てはまる普遍性を備えている点はさすがだなぁと思わずにいられません。

 

26. ネトゲ廃人シュプレヒコール (さつきがてんこもり さん)

 オンラインゲーム中毒のミクさんが陥った堕落と孤独。薄暗い部屋のなかで、レベル上げ、RMTリアルマネートレード*)、MPK(モンスタープレイヤーキル**)などに勤しむ彼女は、「ギルド一番の誇り高き戦士」という閉鎖的なコミュニティのなかでのポジション取りに没頭しています。

 それによって「増えていくのは形無い 数字 ナルシズム」だということ、「リアルの世界は明日も 僕抜きで機能して回る」ことを自覚しているミクさんの言葉には、一種の自己批判も見えるのですが、と同時に、それでも抜け出せないジャンキーな没入感や魅力もつよく描かれています。

 ドラムンベース的な曲調でありながら、歌詞の乗せ方にヒップホップの雰囲気もあるこの曲。いわゆるアメリカのようなゲットーがほとんど失われた日本では、行き場のない若者の感情をすくいあげるヒップホップ的な手法が扱うのに最も適したリアルな対象の一つとして、ネトゲ中毒者もあるのかもしれません。そんな彼らのリアルな心情を、共感や批判も含めてシュプレヒコール(代弁し叫ぶ)する存在として、まさにオンライン上に生きるミクさんというのはある種のアイコンだと言えるのではないでしょうか。

(*RMT:現実の金銭とゲーム内のお金のやりとりを連動させること)(**MPK:モンスターをなすりつけて他のプレイヤーを殺すこと)

 

27. 神曲 (おにゅうPさん)

 「巷にあふれる神のバーゲンセール」「神の出血サービス」という始まりからして、「現代社会に安易にあふれかえる神」への批判かと思いきや、そうではありません。むしろそういったおよそ神とは形容できないようなくだらないちっぽけなものにこそ救われているし、私たち自身も誰かの何かの救いになっているという歌です。VOCALOIDのみならずニコニコ動画そのものへのアンセムという意味でも貴重な作品ですが、もっと広義に社会的なメッセージソングとして考えても、これ以上の真理はないような気がします。

 ところでそれとは別に、アイドル論的に読むのも面白いかもしれません。その場合、一神教的アイドルへのアンチテーゼはもちろん、多神論どころか、「汎神論」にまで進んでいるように思われます。つまり神と被造物の境がなくなる――ファンは単なる受動的な消費者ではなくなるということでしょうか。

 

28. 秘密警察 (ぶりる さん)

 人間の歌手よりも奇妙な語り手になりやすいミクさんですが、この曲では「秘密警察」になっています。秘密警察とは、治安維持に関わる主に超法規的な隠密の警察権力。

 そんな語り手によるこの曲をある種のメッセージソングとして読む、つまり狂気の語り手によるメッセージソングとして読むのはとても面白いことです。「思想弾圧」「取り調べ」「スパイ活動」「監視」「拷問」「人質」・・・といった物騒なことばをチラつかせながら、彼女が私たちに訴えてくるのは、「オマエを監視している」ということ。

 そんなメッセージソングあっていいの?と思うかもしれませんが、メッセージソングは共感させたり納得させたりするものに限定されているわけではありません。聞き手は別に必ずしも語り手に同調する必要はないのですから、このように語り手を警戒するという関係もどんどんあってしかるべきだと思います。