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~ 歌詞でよむ初音ミク 35 ~ 大したことでも

 ミクさんの上京物語

新生活の春ということで。ボカロフォークのタグですが、良質な歌謡曲だけでなく、ファンクっぽい楽しさもある曲を背景に、大人になったミクさんが上京したころを思い出しています。曲・詞ともにフナコシPさん。

 

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どうやら彼女が出てきた先は東京。一人暮らしを始めたものの、「知り合いなんて誰もいないし」、「時間だけは有り余ってるから」、都心のいろんな街をぶらぶら歩きまわっていたそうです。とはいえ渋谷・青山・六本木、吉祥寺・下北・恵比寿…と微妙に背伸びしたおしゃれエリアばかりを歩いてみては、自分がなんとなく場違いなことは自覚してしまい、「少し自分の格好恥ずかしい」。

 

なんだか投げやりな言い回しが男子大学生みたいで可愛らしいのですが、そこは女子らしくナンパをされることもあって、と思えば香水販売のキャッチだったりして怒っているうちに道に迷ってしまう…そんな一人でアホな時間を過ごしている愛おしい女の子です。

 

しかし本人にとっては自分の未来がうまく描けない時期で、お金の心配や一人暮らしの寂しさばかりがこころを占めています。「思うようにはいかないけど 自分で選んだことだからと」自分に言い聞かせては、「まるで悲劇のドラマのヒロイン」みたいに自分の首を絞めていくもどかしい日々。憧れの東京暮らしとのギャップ。

 

そんな彼女が「大人」になったのは、この東京で成功したからとか、素敵な人に出会ったから…ということではなく(今だって彼女は冴えない日々を送っているかもしれません)、「そんな大したことでもないのに」と自分を俯瞰したり可笑しんだりできるようになったからこそです。

 

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彼女の上京物語はドラマチックな成功や大恋愛で彩られることはないけれど、まさにタイトルのとおり、当時を回想する彼女の内面のちょっとした成長に焦点が当てられているようです。

 

卑下のあまり「大したことでも」と尻切れとんぼにさえなってしまう言葉に、それでいて優しさが感じられるのは、ミクさんの柔らかい声に、終始「あなたのその思いは 今じゃ私の宝物」と言っているようなあたたかさが乗っかっているからだと思います。

 

もちろん「なんてね」と照れかくしでおどけずにはいられないあたり、完全に大人なわけでもないところも可愛らしいのですが。

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