~ 歌詞でよむ初音ミク 54 ~ night drive
見つめ合わない、抱きしめ合わない
「ミクトロニカ」タグ。可愛くありつつも何となくドライな曲とミクさんの抑制された声が、都市の夜を思わせるクールポップ。曲はeffeさん、詞は なゆぅさんです。
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「あなた」からの電話に、不機嫌な声で出てしまうミクさん。
彼は「どこ行ってたの?」と心配しながら、今すぐ会おうと車を出してくれる優しい人です。
15分後、待ち合わせたコンビニにスーツ姿のまま現れた彼。
どこかに行くわけでもなく、そのまま首都高速を走るナイトドライブへ。
半分に欠けた月のもと、高層ビルの明かりが通りすぎていくのを見ながら、
音楽の趣味もまったく違っていた二人が、いつのまにかお互いの好きな曲を聴くようになっていたことを思い出して・・・
するとさっきまで不機嫌だった彼女の胸のうちに、
あなたへの想いがあふれてきます。
あなたは「なんで好きになったの?隣にいてくれるの?」
私は「なんで好きになったの?隣にいたいんだろう?」
けっきょく彼女には分かりません。
分からないけれど、寄り添ってきた2人の不思議さを思い出して、
愛されたい、これからも一緒にいてほしいと思うのです。
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こうやって書くと、けっこう気まぐれでツンデレ気味な子に映るかもしれませんが、
じっさいに聴くと、意外とあまりそう感じません。
その理由は、湿度の少ない曲調にもあるとは思いますが、
それだけでなく、彼女の言葉の端々に見える、
自分はこの世界の「片割れ」、あるいは「断片」でしかない――といった感覚にもあるような気がします。
じっさい彼女は「断片」のイメージに注意を向けています。バックミラーやサイドミラーに映る「半分の月」、首都高から見える街のネオンは「砕け散ったジュエリー」。
そして、「私」と「あなた」も断片どうし。
断片として生まれてきたものが、別の断片に思いをよせているのです。
だからそれぞれ好きな音楽がお互いに影響されて変わっていくことは不思議であり、
それでいて「どうして私を好きになったの?」と不安になってしまう。
すでに書きましたが、彼女はその愛の根拠を発見しません。
そのかわり、「連れていってね night drive」と告げるのです。
「ドライブ」とは、横にならび寄り添うものです。
見つめ合って抱きしめ合って運転はできません。
別々に生まれてしまった以上、どこまで行っても別々でしかない。
そんな彼女が交わす愛のかたちは、"寄り添うこと" のようです。
「あなたの助手席が居場所だから」。
夜の首都高でのドライブをとおして、彼女の愛と不安が歌われるのは偶然でしょうか。