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~ 歌詞でよむ初音ミク 64 ~ どうぶつ占い

タイトルの意味合いが変わっていく

「みんなのミクうた」タグ。可愛らしいタイトルにぴったりの、少女のような幼い声のミクさんですが、そういう曲のニュアンスが途中で大きく変化していく意外性には、いつ聴いても新鮮さがあります。曲・詞ともに、すこっぷさんです。

 

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「あたし」は、大好きな「あなた」に構ってほしい。

 

お天気とか流行っているものとか、

あなたが知りたいことなんでも教えてあげたい。

 

悩み事や心配事があったら、なんでも聞いてあげたい。

 

だけど、実際に「あなた」は何を知りたいのか、何に悩んでいるのか、

全然なんにも分からなくて、「あたし」はもどかしく思っています。

 

そんな彼女が持ち出すのが「どうぶつ占い」。彼女はコアラで、彼は黒ヒョウ。

他の占いではどれもこれも「相性最悪」だけど、どうぶつ占いだけは「相性抜群のカップル」なのです。

 

ここまでは、

鈍感で女心の分からない彼氏に、「あたし」がヤキモキしながらのろけてる・・・といった曲だと思わされます。ここに出てくる『どうぶつ占い』は、甘ったるくて都合のいいツールでしかない、と思うはず。

 

ところが、後半に入っていくとその印象はガラッと変わります。

 

「あたし本当は知っているんだよ あなたがあの子を好きなの」。

突然に出てくる「あの子」。実のところ「あたし」と彼は、恋人同士ではありません。

「あなた」は鈍感な彼氏というわけではなくて、「ねぇ 伝えさせてよ」と言うあたり、そもそも彼女の恋を知らないのです。

 

だから「どうぶつ占い」の意味合いも変わってきます。

それは、愛を確かめあう甘ったるいノロケ用アイテムではなく、

必死に無理やりにでも2人のあいだに関係をもたせようとする「願掛け」、つまりは祈りのようなものだったわけです。

 

しかももう一つ明らかになるのは、そんな『どうぶつ占い』になんて、

初めから「これっぽっちだって興味」なかったということ。

 

ありもしないと分かっていながら、信じていないものにすがりつく姿が見えてくると、

「どうぶつ占い」は、急にむなしくて切ないものに変わっていくのでした。

 

むなしさが隠せなくなった最後に、彼女はどうぶつ占いを捨てます。

相性がどうだとか言う前に、自分を変えていくしかない、と。

この曲のタイトルは、彼女にとって決別すべきものだったのです。 

 

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別にセンセーショナルな物語や言葉が置かれているわけではありません。

でも、一つのモノが意味合いを変えていくという、構造的なドラマ性がここにはあります。

 

その仕掛けが成立しているのは、

「どうぶつ占い」という装置が、絶妙にポップでいい加減でお気楽だからであって、

そうであればあるほど、それにすがる彼女の苦し紛れな恋の切なさは際立っていくのだと思います。

 

これがもしもタロットや占星術に頼っていたら、ぜんぜん印象が変わってしまいますもんね。 

 

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