~ 歌詞でよむ初音ミク 71 ~ Natural Style
無理しちゃうのは、誰のため?
「ミクノポップ」タグ。軽やかでお洒落なテクノポップのなかに、さっぱりとした可愛さが、音楽だけでなく歌詞的にも表現された一曲。加工気味なミクさんの声も、女子の悩みをあっさり爽やかなテイストに仕立てあげています。曲はU-jiさん、詞はU-SUKEさん。
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街に出かけるときは、
いつでも「好みじゃない服」に、
「いつもの2割増しで 濃いめアイメイク」の彼女。
しっかり「派手な服と派手メイク」で着飾っておきながら、
「清純そうな笑顔」で話も合わせちゃって、
それもこれも「アイツ」が喜んでくれるから。
でもなぜか「テンション下がっちゃう」。
黒髪ロングで夏を迎えるのは、暑いし重いしお手入れも大変で、
「楽しい?」って聞かれても、一瞬戸惑ってしまったり。
ときどきふっと思うのです。このスタイルで本当にいいのかな?
「嘘をついて 演じてまで 好きって思われたいの?」
「やっぱりありのまま」、
「ただの女の子」として向き合ってみたい。
どう思われるかは少し不安だけど、
そうしたら自然と「テンション 上がってく」。
自分の着たい服を着て、ありのままの素の自分、
「アイツに見せてやるわ」。
平易な語彙をうまく活用したり、
内容もあまり余計なことを歌わずシンプルな構成に留めていることで、
彼女の、曲調と同じくさっぱりした雰囲気がうまく浮かび上がってきます。
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ただし特筆したいのは、
彼のことを「アイツ」と呼んでいることです。
"憧れのあの人" に対してだったら、
理想のために見栄っ張りや虚飾をしている虚栄心のような感じになりますが、
「アイツ」だと、 "理想のあの人" とはちょっと違います。
別に「アイツ」は高みにいるわけじゃなくて、むしろ彼の好みのために頑張っちゃうわけですから、サービス精神が強すぎて疲れてしまう、というのに近い気がします。
別にどっちがいいというわけでもないですし、
そもそも虚栄心とサービス精神のちがいなんて・・・と言われるかもしれませんが、
もっと重症になれば、"自己愛性" と "(他者への) 依存性" のパーソナリティ障害が区別されるくらいですから、そのニュアンスの差は意外と大きなものだったりします。
自己満足のために着飾ってるわけじゃないからこそ、
彼女の言葉は全然浮かれないし、恋に恋する乙女のような雰囲気にはなりません。
実際、むしろ彼女のテンションはどんどん「下がってく」のです。
だから、あっさりテイストに感じられる曲調や歌詞は、
彼女が自己愛的ではない、ということと無関係ではないのかもしれません。
タイトルの「Natural Style (自然体) 」も、
自己愛をやめるか、依存体質をやめるかで、聴こえ方は大きく変わってきますが、
そのへんを「アイツ」という呼称から想像してみるのも、楽しみ方の一つではないでしょうか。