~ 歌詞でよむ初音ミク 125 ~ 夜とくじら
答えのない場所で、答えを探していた
「VOCAROCK」タグ。夜を引きずって歩くような心地よさの裏で、内に秘めて今にも爆発しそうな鬱屈や不安のようなものが胸をぞわぞわさせる一曲です。感情を抑えたミクさんの声も見事です。曲・詞ともにNoakさん。
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深夜、「午前2時」の国道14号線。
「僕は歩いていました 答えはまだ出せないまま」。
それが何についてなのかは、わたしには知る由もありませんが、
一つの道を選んで受け入れてそれに「執着」していくこともできず、
宙ぶらりんの状態でただ生きているというだけの彼は、「ある意味死んでました」。
漂うやるせない気持ちは、他人からも疎まれてしまって・・・。
そうして真夜中をあてもなく歩いていたとき、
「僕」は、ふと「夜空を泳ぐクジラ」を見たのです。
それは赤信号の交差点や、警報灯の点滅する踏切で、夜空の「闇に浮か」んでいました。
――「見とれてしまったんだ」。
「時が止まった」ような気がしました。
「少し肌寒い風が 通り抜けて」いきました。
そして「ゆらりゆらり雲の中へ消えていった」のでした。
誰も気づかないし、現実も変わりません。
それでも「僕」のなかの何かを、クジラは動かしました。
「僕はどれほどちっぽけだい」?
そんなことを考えると、「そんなものは最初から無かったんだ」と思うようになってきて、
彼はクジラに別れを告げ、また歩き出したのでした。
夜がもうすぐ終わろうとしています。
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わたしはずっと
「そんなものは最初から無かったんだ」というところが、気にかかっていました。
当初、「そんなもの」とは "クジラ" のことだと思っていて、
だとしたらそのクジラに心を動かされたのに、それを否定するのが不思議だったし、
せっかく「真実と嘘の境界が消えかけていた」存在なのに、「無かった」とケリをつけてしまう所もうまく飲みこめませんでした。
もちろんそれでも読めるのかもしれないのですが、
今はむしろ、曲のいちばん冒頭にくる「 "答え" を出せないまま」に対しての、「そんなものは最初から無かったんだ」なのかもしれないと思っています。
この世界は、わたしたちには到底知り尽くせないほど複雑な因子で回っていて、
いわば夜空を泳ぐあのクジラのように、ある意味で “荒唐無稽” な、だからこそ ”崇高” な存在だとしたら。
そのなかで自分がひねり出す「答え」なんて
あまりにも「ちっぽけ」に思えてきたりしないでしょうか。
こうして、ちょうど曲のあたまとお尻がつながるような構造になっているとすれば、途方もなく徘徊していた夜が最後に明けていくのも、とても腑に落ちるような気がします。
答えのない場所で答えを急ごうとするから、彼は途方に暮れ、真夜中を彷徨っていたのかもしれません。クジラは「そんなもの」を気にも留めず、夜空を漂っていたのです。