~ 歌詞でよむ初音ミク 147 ~ えっとね うんとね

幼女として歌うことのできるアイドル

「みんなのミクうた」タグ。ピアノのやさしいメロディに合わせて、幼いミクさんが童謡のように歌っています。なかなか忙しくてミクの日 (3月9日) には遅刻組になってしまいましたが、ミクさんらしくあたたかい気持ちになる作品として、この曲を選んでみました。曲・詞ともに -K- さんです。

 

**********

「えっとね うんとね」、

 

3歳くらいのミクちゃんが、

なにかを一生懸命、話してくれようとしています。

 

「えっとね うんとね」

「えっとね うんとね」

 

そうやってなんとか伝えようとしていたのは、

彼女が「だいすき」なものでした。

 

「パパ」や「ママ」、それに「ねこ」が「だいすき」なのです。

 

それでも言い足りないミクちゃん。

もっともっと「だいすき」なものを教えてあげたいみたいです。

 

「ねぇ ねぇ」

「えっとね うんとね」

「あのね あのね」・・・

 

・・・そこで曲は終わりです。

寝ちゃったのかもしれません。

 

**********

 "この子は何を言おうとしてるんだろう?" という、

ちょっとサスペンスな感じで進行するこの曲。

 

けっきょくは 、「だいすき」なものを伝えるだけのシンプルな内容で、

しかも最後は言いかけのまま終わってしまいます。

 

ところがそうして曲が終わってしまっても、

"何が言いたかったんだ!"と怒る人はあんまりいない気がします。

 

それって、曲の途中で、

わたしたちの聴き方自体が変わっていくからではないでしょうか。

 

つまり最初は言葉の「内容」や「意味」に注意を向けていたのに、

だんだん内容よりも、「伝えようとする姿そのもの」を見守っていくような。

 

たしかに、

自分が何を言ってるのか整理できない所など、

機械音声のミクさんは、幼い子供にすこし似ているのかもしれません。

 

逆に言うと、"伝えたい"、"表現したい" といった自覚の強い人間だと、

こうした弱さはむしろ表現できなかったり。

 

意味を力説するメッセージソングとは真逆の、

そこから一歩引いた (それどころか途中でやめちゃう) 歌詞が、

おもしろくてかわいいです。

 

思えば、幼女のことばを歌わせても違和感がないのは不思議なことで、

そんなミクさんの、人間とは異なる歌い手としての面白さも、

あらためて感じさせてくれる一曲だと思います。