~ 歌詞でよむ初音ミク 147 ~ えっとね うんとね
幼女として歌うことのできるアイドル
「みんなのミクうた」タグ。ピアノのやさしいメロディに合わせて、幼いミクさんが童謡のように歌っています。なかなか忙しくてミクの日 (3月9日) には遅刻組になってしまいましたが、ミクさんらしくあたたかい気持ちになる作品として、この曲を選んでみました。曲・詞ともに -K- さんです。
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「えっとね うんとね」、
3歳くらいのミクちゃんが、
なにかを一生懸命、話してくれようとしています。
「えっとね うんとね」
「えっとね うんとね」
そうやってなんとか伝えようとしていたのは、
彼女が「だいすき」なものでした。
「パパ」や「ママ」、それに「ねこ」が「だいすき」なのです。
それでも言い足りないミクちゃん。
もっともっと「だいすき」なものを教えてあげたいみたいです。
「ねぇ ねぇ」
「えっとね うんとね」
「あのね あのね」・・・
・・・そこで曲は終わりです。
寝ちゃったのかもしれません。
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"この子は何を言おうとしてるんだろう?" という、
ちょっとサスペンスな感じで進行するこの曲。
けっきょくは 、「だいすき」なものを伝えるだけのシンプルな内容で、
しかも最後は言いかけのまま終わってしまいます。
ところがそうして曲が終わってしまっても、
"何が言いたかったんだ!"と怒る人はあんまりいない気がします。
それって、曲の途中で、
わたしたちの聴き方自体が変わっていくからではないでしょうか。
つまり最初は言葉の「内容」や「意味」に注意を向けていたのに、
だんだん内容よりも、「伝えようとする姿そのもの」を見守っていくような。
たしかに、
自分が何を言ってるのか整理できない所など、
機械音声のミクさんは、幼い子供にすこし似ているのかもしれません。
逆に言うと、"伝えたい"、"表現したい" といった自覚の強い人間だと、
こうした弱さはむしろ表現できなかったり。
意味を力説するメッセージソングとは真逆の、
そこから一歩引いた (それどころか途中でやめちゃう) 歌詞が、
おもしろくてかわいいです。
思えば、幼女のことばを歌わせても違和感がないのは不思議なことで、
そんなミクさんの、人間とは異なる歌い手としての面白さも、
あらためて感じさせてくれる一曲だと思います。