結果発表『Singularity』:マジカルミライ2017楽曲コンテスト

先月、4回にわたって紹介した、

「マジカルミライ2017」楽曲コンテストの結果発表がありました。

 

応募はなんと500曲ちかく、 

このブログでもほんの一部(40曲弱)だけピックアップしてみたのですが、

そのうちコンテストの賞に選ばれた作品もありました。

 

また逆に、わたしが拾いきれなかった素敵な作品もありました。

 

そこで、紹介記事も書いたことですし、最後までお付き合いするということで、

選ばれたのはどういう作品だったかについても、せっかくなので歌詞に注目しながら簡単に紹介しておこうと思いました。

 

**********

準グランプリ

『dear my singer』 (mickeY (雨上がりP) さん)

 マスターを引っ張っていく明るくて元気なミクさん。

 おもしろいのは、明るさ以上に、どこかマスターを叱るような、それでいて寄り添って背中を押すような語り手のミクさんがいることです。「もっとしゃんとして胸はってごらん」「ミライを探しにいこうよ」。だけど押しつけがましくないし、さっぱりしていて爽やかです。人間的な湿度のない彼女のカラっとした良さが、こういう風に歌詞にも活かせられるんですね。


『Shiny★STARS』 (雨漏りPさん)

 このブログでは、紹介記事の大トリで紹介した曲です。

 とっても可愛いこの曲のミクさんですが、実は結構はみ出し者というか、「マイペース」で「アヤフヤ」な女の子です。でも人間社会から置いてけぼりの彼女だからこそ、「いつでもキラキラこの笑顔」の、「世界中一番 Smiley Girl」でいられる。そんな小さな優しさに満ちたミクさんが語りかけてくれます。それって、あるいは音楽そのもののことでもあるのかもしれません。かわいいだけじゃなくて、愛の詰まった心地よさがある作品です。

 

『いるみねイト』 (曲: キッドPさん / 詞: HzEdge (クリスタルP)さん)

 人を結ぶ色とりどりの「イト」(糸・意図)が、光を作りだして新しい景色を「照らす」 (イルミネイト)。言葉のポリセミーを活かした歌詞ですが、決して頭でっかちじゃなく、子供にも優しく語りかけるような曲になっているところが素敵です。

 実際、このミクさんは演説調ではありません。同じ目線に立って、当事者として「いるみねイト」に紡がれるうちの一人として歌っています。その儚さや弱さみたいなものが、なおさらこのイトの「キラキラ 愛しい」大切さを感じさせてくれます。


『タイニーチャーム』 (Materiaさん)

 いつか消えてしまうなら、忘れられるくらいなら、自分のペースで「思いの丈」を「あなた」に伝えようとしている彼女。

 それは「ちいさなお守り(タイニーチャーム)」のような、「O15 123」という減ったり増えたりする数字の羅列です。私には数列の意味は分からないのですが(ちゃんとした意味はあるんだと思います)、分からないとしても、その謎めいた暗号のような数字が、彼女の「思いの丈」であることにメカニカルな切なさを感じます。それでも彼女にとっては「1つ1つ歩み寄ってみよう」としているのです。

 

『Eternal Melodys』 (だいすけPさん)

 爽やかなロック系ポップスに、意外なグロウルが印象的だった作品。以前このブログでも取り上げた『初音ミクのうた』の、だいすけPさんです (「ミク視点のVOCALOID曲 (2) 」)。

 歌詞にもあるとおり、今回えらばれた曲のなかでは最も「まっすぐなメッセージ」系の曲という気がします。「不器用でも不自由でも叫びたいことがあるんだ」からの部分は、人間の感情を背負うというVOCALOIDの側面が憑依したかのように、力を込めて食いしばるミクさんを聴くことができます。

 

グランプリ

『Singularity』 (keiseiさん)

 グランプリは、個人的にも『WALK AROUND STEREO (Album Mix)』という曲が好きなkeiseiさんでした。音楽の確かな実力はわたしなんかが言うまでもありませんが、独特なテーマの歌詞もほかの曲と大きく異なっていたところだと思います。

 歌うのは未来都市、未来の技術社会。この世界でAIが、人間の知能を追い抜いたときに起こる歴史的大変動の瞬間(シンギュラリティ)については、懸念や不安の声、そして技術そのものへの批判が多く投げかけられています。

 しかしこの曲のミクさんは、その技術によってこそ、孤独や単独(シンギュラリティ)を抱えてた者たちが向かい合う未来、「悲しみも喜びも分け合って」生きる可能性を探ろうとしているかのようです。

 それは彼女の存在自体が示すように、テクノロジーには、人間の表現やコミュニケーションを拡張したり現実化させる共存の道があるはずだからではないでしょうか。そんなミライを考えさせてくれるスケールの大きな曲ですし、それを歌って違和感がないのは、人間じゃないミクさんならでは。MMDや「作ってみた」からAR/VRに至るまで、彼女がそうしたテクノロジーのアイドルでもあるということを改めて思い出させてくれる作品です。

 

**********

 以上、準グランプリ5曲、グランプリ1曲でした。

 

もちろんわたしが個人的に良いなと思ったものの、

残念ながら賞には選ばれなかった曲もたくさんあります。

 

上演を前提としている以上、

セットリスト上の関係や、公演のイメージ、映像やダンスとの相性など、

主催側が求めるものとのマッチングもあります。

 

だから選ばれなくても素晴らしい曲がたくさんありましたし、

そのなかにはきっとこれからも素晴らしい音楽を作る方々がいらっしゃると思います。

 

ですので、ほかの素敵な作品 / 作者さんについては、

これもまたほんの一部ですが、過去記事も参考にしてみてください。

すべての皆さんのご活躍をお祈りします!