~ 歌詞でよむ初音ミク 150 ~ こころすうぃんぐ

「しあわせ」ってこわい

「VOCAJAZZ」タグ。育ちのいいお嬢さんみたいなミクさんが、豪華なビッグバンド(生録音だそうです)に支えられて歌う、ちょっとレトロモダンな魅力にあふれた作品。曲は しんぱすさん、詞は ミコルーシュカさんです。

 

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ちょっぴり哲学的な気分に悩んでる少女のミクさん。

彼女は「しあわせ」を求めています。

 

ふわふわ、きらきらしてて、

でも確かに「かたちはちゃんとある」ような。

うっとりとして、こころときめいて、だけど恐ろしくはないような、

そんな「しあわせをください」と言う彼女。

 

でも「しあわせ」って、

はかなくて落ち着きがありません。

消えたり、離れていったり、油断するといなくなっちゃうのです。

あるいは、すべてが夢だったと・・・。

 

だから「しあわせってなんだかこわい」。

幸せになった分、とつぜん病気になったり、

むくむくおそろしいことがふくらんでいたりしない?

 

それでも「しあわせになりたい」・・・。

「ふあんてい」で「めまい」のするような「ふしぎ」。

 

そんな「しんじつの しあわせ」に対して、

「あなたはいったいだれなの?」とは問いかけてみるのですが、 

「もがいてみてもわからない」し、

けっきょく「つかみかけてもまた消える」だけなのでしょう。

 

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彼女が悩むとおり、

たぶん「しあわせ」ってどこかにあるわけじゃありません。

 

どんな状況でも「しあわせ」はありうるわけで、

「感情」みたいに、出来事に "付随" するものというか、

だからそれ自体を見つめようとすると消えてしまいます。

 

まるで幸せにこだわって不幸になりそうなミクさん。

じつは客観的に、そしてちょっとユーモラスに描かれています。

 

ところで、ふと、

彼女の求める「しあわせ」は、西洋っぽい「幸福」なのかもと思いました。

精神的な充足、満たされる感情といいますか。

 

でも日本語の「しあわせ」って、

もともと「為合わせ」、つまり「ひきあわせ」に近くて、

「幸運」とか「良い巡り合わせ」みたいなものなんです。

 

なんだか「幸福」のイメージからすると肩透かしっぽいですが (笑)、

そもそも幸福を「追求する」とか「手に入れる」というのが、

ヨーロッパやアメリカ的なのかもという気もします。

 

手に負えないもの、待つもの。

できることといったら、せいぜい招き寄せる、くらい。

 

「しあわせ」とは偶然のことなんだと思えば、

追い求めても仕方ないことで、出会いと別れを待つしかないのかもしれません。

 

ミクさん、そんな風に考えてみるのはどうかな?