~ 歌詞でよむ初音ミク 155 ~ Eureka
彼女が「みつけた」もの
「ミクビエント」タグ。わりとはっきりしたビートながら、落ち着いてすごく安らかな気持ちになれる曲。穏やかで噛みしめるようなミクさんの声が、歌詞ともぴったりです。曲・詞ともに、Ayumiさん。
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とってもシンプルな歌詞。
でも不思議な展開で、
ぽつりぽつりと反対の言葉が並びます。
「うかぶ」と「しずむ」、
「あるく」と「とまる」。
「わらう」と「おこる」、
「つかむ」と「はなす」。
いわゆる対義語の繰り返し。
しかも断片的な。
なんだろう?と思わせておいて、
彼女はやがて結ぶのでした。
「ぜんぶわたし」。
反対のもの、矛盾するもの、
どれもこれもが合わさって生きているもの。
『Eureka (見つけた) 』。
「それがわたし」。
「それでわたし」なのです。
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たったこれだけの歌詞で、
"どうつながるんだろう?" と思わせる、静かなサスペンス感。
それだけで十分素敵なのですが、
もうひとつ気づいたことがあります。
というのも、よく聴くと、
反対語の順番が入れ替わっているんです。
「うかぶしずむ」が、「しずむうかぶ」というふうに。
とすると、ただの反対語というより、
行ったり来たりの周期的なリズムがあるんじゃないでしょうか。
浮かんで、沈んで、また浮かんで、
笑ったり怒ったりを繰り返しながら、
歩き出しては立ち止まり、でもふたたび歩き出し、
何かを掴み、何かを手放し、そしてまた掴んで。
――それは、矛盾のなかの "葛藤" というより、
おだやかな波のように "たゆたっている" みたいです。
でもそれこそが彼女の見つけた「わたし」、
知らないうちに矛盾のなかで生きてゆらめく「わたし」、
というものなのかもしれません。