~ 歌詞でよむ初音ミク 167 ~ ジェミニ

途切れるストーリー、激しくなっていく音楽

チップチューン的な「ミクノポップ」ですが、最後のほうで急に感情的なギターが前面に出てくる展開など、簡単には分類できない作品です。曲・詞ともにTaskさんです。

 

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洋服も、おやつも、部屋も、

いつも二人で同じものを与えられてきた、

双子(ジェミニ)の「あたし」と「姉」。

 

背丈も、身振りも、二人ともそっくりで。

 

それなのに、なんでも最後に手に入れるのは「姉」のほうでした。

 

「あたし」のものをいつでも盗み、奪い、

いつのまにか「あれよあれよとアイツ (姉) のものになり」、

そのくせ本人は、「われ関せずな態度」。

 

「あたし」が好きになった「彼」でさえ同じでした。

『ほら見て、彼』と無邪気に言う姉の、あの「卑しそうな横顔」。

 

――また騙されて、また奪われるんじゃないか。

 

だから「あたし」は「祭囃子の騒がしい夜」に、

「アイツと同じ浴衣で」、「アイツのすぐそばで」

彼を、「攫って」「壊して」、「あたしだけのモノ」にしようとするのです。

 

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ぐっと抑えてきた曲が、

ラスト 4:20から感情的なギターのうねりへ展開していく流れ。

 

おもしろいことに、ストーリーはそこで途切れて消えます。

 

たとえば歌詞の物語が完結しているなら、

音楽は、BGMみたいな添えものになりますが、

 

この曲はむしろ逆で、山場となる音楽に向けて、

歌詞の物語のほうが黒子になって盛り上げていくような感じです。

 

つまり、クライマックスは音楽なのです。

じつは歌詞のほうがBGMみたいな。

 

なにが起こったのでしょうか。

ただの三角関係かもしれないし、もっとおそろしい展開かもしれません。

暴力や、攻撃的な暗示もありますし。

 

でもそれを言葉でストーリー的に説明しちゃうよりも、

このラストのほうが、いろいろ想像できてよっぽど雄弁な気がするんです。