~ 歌詞でよむ初音ミク 139 ~ スターナイトスノウ

キラキラした無常感

さっぽろ雪まつりの恒例イベント「Snow Miku」、2017年のテーマソング。

Mitchie Mさんの『好き!雪!本気マジック!』を扱おうとしていたのですが、ちょうど今年の雪ミク曲が上がったのでこちらを先に取り上げました。曲はOrangestarさん (編曲と調声がn-bunaさん)、詞はお二人の共作です。

 

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この曲には「僕ら」と「私」が出てきたり、

「笑って」という語りかけが何度もあったりします。

 

もちろん読み方はいろいろあると思いますが、

多くの部分に、“君” という二人称を置いてみると、

“君” への呼びかけの歌として、もう少しすっきり聴けるような気がします。

 

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「冬が来るたび」、 

「雪を手に何を作ろうか」と悩みながら、

「星の降る街をうつむいて」歩いている “君” 。

 

また今年も「大人に」なっていくのに、

何か「こみ上げて」くるものがあっても、「何も残せない」まま、

「描いた」未来に「届かなくて泣く」 “君”。

 

何も残せないのなら、

ぜんぶ諦めてしまって「私はもう私のままでいよう」と「星に願う」 “君”。

 

そんな “君” に向かって、

「僕」は語りかけているのではないでしょうか。

 

手のなかにあるその「雪」で何も残せなくても、

それどころか「新雪に足をとられるまま」になったって、

 

ほら「吐いた息」を見てみなよ。

どっちにしたって「僕ら生きているんだ」よ、と。

 

「どうせ」「生きていく」、

相も変わらず「僕ら今日もただ生きていくんだ」。

 

だから「笑って」。

 

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前向きでキラキラした可愛い曲のように見えますが、

じっさいは「ただ生きていく」という無常感に満ちています。

 

とはいえ、無常ではあるけれど

気づけば息を吐いていること、「ただ」生きているということの不思議さだけで、

じゅうぶん「笑って」いいんだよ、と語りかけているかのようです。

 

何も残せなくても、愛する。

それが、この曲の歌う「愛」なのかもしれません。

 

期間限定の「雪まつり」でのテーマソングなのですが、

例年の “消えるものへの愛”という切ないアプローチの曲とはちがって、

“消えても(生きていくのだから)愛する”、といった感じなのでしょうか。

 

雪ミクのテーマソングは、

「雪」というモチーフをめぐっていろんな切りとり方があって面白いですね。