~ 歌詞でよむ初音ミク 219 ~ フューチャー・イヴ
無数の未来=ミクを信じること
マジカルミライ10周年テーマの記念作。ものすごい音と映像と言葉の洪水ですが、あくまでポップな作品になっています。曲・詩ともにsasakure.UKさん。過去作オマージュもいっぱい詰まっていますが、今回はVOCALOIDイメージソングの視点で聴いてみました。
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結局、初音ミクちゃんって何なんだろう?
「ずっと近くで歌っている」の?
それとも「ずっと遠くの場所にいる」?
「ねえ、生きてるよね・・・!?」
いや、「偽物(ウソ)」でしかないんだっけ・・・?
誰かにとっては「サヨナラ」なのに、
別の誰かにとっては「初めまして」で、
彼女の周りには、
「ずっと変わらない世界」があって、
でも「変わってしまった世界」もあって、
君は「隣にいて、隣にいない」。
初音ミクとは何か。
「僕は、僕はどっちだっただろう」。
でも、ちょっと待って。
sasakureさんの思いが響いてくる気がします。
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「どっちだった?」――それってなんだか過去のほうを向いていませんか?
初音ミクとはその名のとおり「未来」なのだとしたら、
シュレーディンガーの猫じゃないけれど、
「どっちか」じゃなくて、いつでも「どっちも」に存在しているかもしれないのでは?
「隣にいて、隣にいない」彼女は、
「サヨナラ」でもあるし「初めまして」でもあるし、
「シアワセ」も「フシアワセ」も、
「愛しさ」も「絶望」も、
未来のまま、まだ未確定のまま「全部抱きしめた感情」で・・・。
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マジカルミライ10周年でsasakureさんが見せてくれたのは、
<未確定のまま、あっちにもこっちにも "夢" のように存在する(しないかもしれない)未来=ミク>
というイメージでした。
"伝染病" や "戦争" が圧倒的なリアルとして襲ってくる世界のなかで、
この混濁した「ハレーション」のような「夢を愛する」という「魔法」を、
「もう一度」「信じる」ことさえできたなら、
いつでもその瞬間から、
わたしたちは<未来=ミクの前夜(イヴ)>に立っているのかもしれません。
再び「ハジマリ」へ・・・。
この曲で、そんな無数の「未来=ミク」から届いてくるのは、
非人間的で淡く寂しく、だけど優しさと慈愛にみちたミクさんらしい声の、
「一緒に謳おうよ、未来を―!」と誘うイヴ(Eve)のような言葉なのでした。
そういうふうに聴いてみるのはどうですか?