~ 歌詞でよむ初音ミク 195 ~ 背比べ

見つめ合えるのは、見失っていたから 

アコースティックの静かなバラードで、耳ざわりの良い落ち着いた作品。抑制されたミクさんの声が切なさを増幅させています。曲・詞ともにTokayaさん。

 

********** 

いつのまにか高さの変わっていた君のブーツ。

 

「君の目線が少し高くなっていた」のでした。

 

とつぜん前髪が変わり、「目にかからなく」なっていて。

 

君に合わせて買った「布団」も、

以前は朝になると君によく取られていた「毛布」も、

君に預けていた「合鍵」も、

 

いまはここに「全てが有る」のに、

もう「何も無いんだよ」。

 

君が「つま先立ち」をして、

やっと近づいていた声、吐息、唇、目線。

 

その必要がなくなってしまったということは、

「さよなら」を意味していたのでした。

 

**********

この曲で繰り返されるのは、

「逆説」です。

 

前髪を切って目が見えるようになったのに、

そのことが何かを隠していたり、

 

合鍵が自分の手元にあるのに、

それがあるということは彼女が出ていったからだったり、

 

いま存在しているものが、その不在を告げるような

まるでお墓みたいな構造の歌詞になっています。

 

そう考えると、

高めのブーツを履くようになった彼女は、

「目線が合う」ようになっちゃったのかもしれません。

 

そしていつのまにか「目線が合う」ようになったことこそ、

2人のあいだの「大きなすれ違い」を意味していた――

 

そこまで歌っているかは分かりませんが、

 

「見つめ合えるのは、見失っていたから」なんて

すごく詩的な逆説だなと思うんです。