~ 歌詞でよむ初音ミク 195 ~ 背比べ
見つめ合えるのは、見失っていたから
アコースティックの静かなバラードで、耳ざわりの良い落ち着いた作品。抑制されたミクさんの声が切なさを増幅させています。曲・詞ともにTokayaさん。
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いつのまにか高さの変わっていた君のブーツ。
「君の目線が少し高くなっていた」のでした。
とつぜん前髪が変わり、「目にかからなく」なっていて。
君に合わせて買った「布団」も、
以前は朝になると君によく取られていた「毛布」も、
君に預けていた「合鍵」も、
いまはここに「全てが有る」のに、
もう「何も無いんだよ」。
君が「つま先立ち」をして、
やっと近づいていた声、吐息、唇、目線。
その必要がなくなってしまったということは、
「さよなら」を意味していたのでした。
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この曲で繰り返されるのは、
「逆説」です。
前髪を切って目が見えるようになったのに、
そのことが何かを隠していたり、
合鍵が自分の手元にあるのに、
それがあるということは彼女が出ていったからだったり、
いま存在しているものが、その不在を告げるような
まるでお墓みたいな構造の歌詞になっています。
そう考えると、
高めのブーツを履くようになった彼女は、
「目線が合う」ようになっちゃったのかもしれません。
そしていつのまにか「目線が合う」ようになったことこそ、
2人のあいだの「大きなすれ違い」を意味していた――
そこまで歌っているかは分かりませんが、
「見つめ合えるのは、見失っていたから」なんて
すごく詩的な逆説だなと思うんです。