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~ 歌詞でよむ初音ミク 120 ~ magnet

(派生PV)

マグネットが一つになることはできない

「ミク&ルカリンク」のデュエット曲。いわゆる「禁じられた恋」一般に当てはまる名曲で、じつは不倫や近親愛などでも通じるのですが、わたしが注目したいのはそこではないので、ここでは割とノーマルに受けとって同性愛として百合百合しく読んでみます。曲・詞ともに流星P (minato) さんです。

 

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心の隅に「か細い火」が灯ってしまったミクさん。

それが、みるみるうちに燃え広がって収拾がつかなくなってしまいます。

 

ルカさんは、そんな彼女に「唇から舌へと」絡ませて、

「許されない事ならば 尚更燃え上がるの」と呟くのです。

 

ミクさんは戸惑うのでした。

 

女性同士のそうした欲望に、おそらく免疫のなかった彼女は、

「間違い」かもしれない、「おかしい」かもしれない、と感じてしまいます。

それでも「抱き寄せて欲しい」「キスをして塗り替えて欲しい」という気持ちは抑えられません。

 

魅惑の時間に酔って溺れるあいだ、そうした迷いを拭えるのでしょう。

 

ルカさんはそれが「紛れもない現実の私達」だと分かっています。

「触れてから 戻れないと知る それでいいの」。

誰だって最初は怖いけれど、行けるところまで行けばいいよ、と。

 

そうして重ねた二人の身体。

ところが夜明けがくると、禁じられた境界を踏み越えてしまったことの不安がこみあげてきて、ミクさんは泣いてしまいます。

 

同じベッドの上で横たわるルカさんは、「大丈夫」だよ、と囁いてあげるのですが、

彼女の目にもまた、涙のあとが滲んでいたのです。

  

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さて、不安で泣いてしまったミクさんは、

「あなた “も” 泣いていたの?」と問いかけるのですが、

二人が流す涙の意味は、はたして同じなのでしょうか。

 

そもそも二人は、同じことを歌っているように見えますが、

実は、それぞれ微妙に異なることを歌っています。

 

ミクさんが歌っているのは、未知の深淵の前でためらう不安や迷いです。

これに対してルカさんは、彼女を受け止めようとしている・・・だけではありません。

 

「束縛して もっと必要として」「愛しいなら執着を見せつけて」。

これは、きっとミクさんが思っているよりずっとドロドロした愛です。

 

ルカさんがこうした強い執着を求める背景には、

「例えいつか離れても・・・」と言っているように、二人の関係の脆さについての予感があるのだと思います。

 

マグネットは磁力によって引き合う(あるいは退け合う)わけですが、

別々のものがくっつくだけで、決して一体化することはできません。ほかのベクトルでもっと強い力学が介入すれば、簡単に引き剥がされもします。

 

それなのにミクさんのほうは「融けてゆく」と言ったりして。

そんなに簡単な愛じゃないことを、ルカさんは分かっているのではないでしょうか。

 

入り口で葛藤しているミクさんのピュアな想いと、その先を見ているルカさん。

どちらも間違っていないからこそ、求め合いながらすれ違う二人のあいだには悲しみがあるように思います。

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