~ 歌詞でよむ初音ミク 52 ~ Reminiscence
恋愛をとおして「時間」について歌った曲
オルガンとピアノが並ぶポストミック。感情を失ってしまったような呆然としたミクさんが、恋人との関係が崩壊した一場面を、出来事ではなく心情から切りとっています。曲・詞ともにforuteさん。
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速度が合わず、すれ違っていく二人の世界。
彼女は、溝がこれ以上埋まらないことを分かっています。
「伝えたいことばかり今更浮かぶ」けれど、
夜の静寂を壊して朝が訪れるたび、
「いつもずっと側に居た君」がいなくなったことを確信させられて。
「君とずっとどこか繋がってる」というのは勘違いでした。
二人の明日を探してもそんなもの最初から無かった。
二人の未来を一緒に描くのも、今日でもう終わり。
そうは思うものの、彼女にはありありと君のすがたが想い出されてしまいます。
それでもいつか色褪せて、過去の思い出と割り切れる日が来るのでしょうか。
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彼女を苦しめているものは何だろうと考えました。
もちろん直接的には「君」がいなくなったことなのですが、
たとえば別れの原因とか、そういったことよりも、
むしろ「時間」の問題に悩まされているような気がします。
レミニセンスとは「思い出」「記憶」のことです。
でもこれは意識的に「現在からふりかえって思い出す」ような、
リメンバーでも、リコールでも、リコレクトでもありません。
レミニセンスとは、意識したくなくても
「過去のほうに囚われて思い出されてしまう」ような強烈な記憶です。
君との過去が「レミニセンス」であること、
それが彼女を苦しめているのではないでしょうか。
――あんなに二人の楽しい過去があったのに、どうしてその未来は描けないの?
――「何も変わらぬ過去を 繰り返し思い出して」も、「消えない過去たちを並べて思い馳せ」ても、”明日の空”が、「見えない」「見つからないよ」・・・。
あんなにも君との思い出があったのに、
君との未来は無かったのです。
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でもほんとうは、
そんな君との過去も、
あくまで "現在" の彼女が切り取った記憶だったのかもしれません。
無数にある過去のなかで、
君との記憶だけを強化しつづけているのは、
過去に囚われているようにみえて、やっぱり "現在" の彼女ではないでしょうか。
だから、
もしも彼女がそこから抜けだせるとしたら、
別に君との過去を否定したり忘れることではなくて、
曲の最後にあるとおり、やがて「色褪せて思い出に変わっていく」こと、
つまり過去が基準ではなくなっていくことだと思うのです。
彼女にそのときが訪れるまで、
きっとこの曲は「Reminiscence」と呼ばれる必要があるのでしょう。