~ 歌詞でよむ初音ミク 173 ~ ナイトダイバー
沈もうとしても、やがて消えてしまう海
まったりとグルーブをきかせて水中に沈んでいこうとするような心地の良い作品。曲・詞ともにRさん(R SoundDesignさん)。
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深夜、「眠れない」「遣る瀬無い」気持ちで、
一人でひっそり都会の夜空をながめているとき、
なんだか自分が海の底に沈殿する泥か砂みたいな気分になったことはありませんか?
なにかのはずみで、ぶわっと巻き上げられては、
またぷかぷかと漂いながら沈んでいって。
深海のような夜の水圧が、ゆっくりとずっしりと、
孤独な「一人淀む」「僕」に押しかかってくるのでした。
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本当の「深海」とは違って、
夜は、何もしなくても明けていってしまいます。
「夜が少し軽くなるよ」。
でも、"夜が明ける" といえば、
普通なら希望とか前進のイメージなんですが、
この曲はたぶん逆で、
それがしんどくて苦しいと歌っているのではないでしょうか。
放っておいてほしい。
そっとしておいて――。
「どこまでも沈めてよ ねぇ」。
それなのに時間は進んでいってしまうのです。
この海は、つまり夜は、
いつまでも沈んでいくことを許してくれません。消えてしまうのです。
ときどき入ってくるブレイクは、その夢が途切れそうだということを、
なんとなく予感させるのでした。