~ 歌詞でよむ初音ミク 192 ~ Dreamship

夢の残酷さ、夢のような残酷さ

キラキラと淡い幻想のようなポップ感からの、たたみかけるように重低音を増していくシンボリックな情景を歌った作品。曲・詞ともにMystekaさんです。

 

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 「宵闇の中」、

帆を掲げて走りゆく船。

 

「遠ざかる岸辺」。

そこにはまだ憧憬を残したままでした。

 

涙を堪えたあなたの「さよなら」という言葉。

そして「見つめあう瞳に映る夕陽の煌めき」や「手の温もり」。

 

それらすべてが

「碧い波」に飲み込まれ、

「高い空ににじんで消えていき」ます。

 

忘れないように胸の奥に描きとめながら、

「僕」は「朝靄」のなか、ただ一人、

色あせた地図と壊れかけた方位磁針を握って進んでゆく・・・

 

「静寂を裂いて 航跡を追いかけていた」のでした。

 

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「航跡」とは海に残された波や泡の痕跡のこと。

つまり「僕」は何か別のものを追いかけていったようです。

 

だからだと思うのですが

この曲では、

 

「波」に掠められ、色が滲み、忘却への危機感といったような、

“失われてしまうこと” のイメージが繰り返されています。

 

“夢の舟” と聞くとキラキラしたものを浮かべがちですが、

 

旅立つ者の希望や力強さを感じさせつつも、

それだけじゃなく “夢の舟” が置き去りにしていくものを描くことで、

 

夢の残酷さだったり、犠牲によって際立つ夢幻感といった

両義性が浮かび上がっている気がするのです。