~ 歌詞でよむ初音ミク 177 ~ 夜がはじまる

「堕天使との夜」が。

スローでメロウなまどろみの心地よい曲調から始まって・・・?という遊び心にみちた作品。ことごとく裏拍で入っていくミクさんの声もとっても素敵です。曲・詞ともに、平田義久さん。

 

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とある夏の夜のこと。

 

満開の火花が散る下で、鳴りわたる祭りばやし。

 

そこに、髪を切ってきて可愛くなった「きみ」。

 

一瞬、風が凪 (な) ぎました。

神様の合図のようでした。

 

目をつむり、口を綴じれば、

静かで甘く切ない「夜がはじまる」。

 

・・・でも、そんな「きみ」には「翼がみえた」のでした。

 

「こんなにも恋してる」のは、

「楽園から落ちてきた天使」に対してなのです。

 

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あれ?それって "堕天使" のこと??

 

てっきり ”夏祭りの青くて淡い恋愛" ――的なわりと普通のイメージだったのに、

ラストに近づくと急激にぐらつき始めます。

 

まるで快楽に堕していった天使のような・・・。

 

もちろん受け取り方は自由なんですが、

そう聴いてみると、なんだかこの「夜」の甘さや静かさが、

「神様」からの、「楽園」からの、失墜や追放の「夜」にも思えてきます。

 

とはいえ、この「夜」が具体的にどういう意味かは分かりません。

なぜならそれは歌われないからです。

 

そんな夜へと向かういわば "助走" のような歌詞

まさに「夜がはじまる」ところでおわりです。

 

でも、代わりにそこから音楽のほうは、

一気にあふれるように色っぽくなっていきませんか?

言葉よりずっと雄弁に語っているのではないでしょうか?

 

きっとそこにこそ「取り返しのつかない」快楽、

罪に似た「夜」があるはずです。