~ 歌詞でよむ初音ミク 185 ~ はらぺこのルベル

邪恋、きみのわるい予感

ラテンなテンポなのに、じめじめした風景が描かれていて、それをさらっと歌うミクさんの不気味さが際立つ、絶妙なバランスの作品。曲・詞ともに電ポルP (koyori) さんです。 

 

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「祭りの後 二十二時」のこと。

 

「雨降り」のため、すこし「涼しさを感じる」なか、

「月明かりが照らす」下で、

 

惹かれ合う「指先」。

 

「帰らないで、このまま」とこぼれた言葉を境に、

「飢えた(はらぺこの)二人」のあいだには、

「邪恋」と映るやもしれぬ「愛」がはじまろうとしていたのでした。

 

くっついて、ひっついて、せがみあって、

「夜に溺れ」てゆくのです。

 

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邪恋、許されない愛というのは "切ない" とか "苦しい" もの・・・

――という風に描かれがちですが、

 

ほんとは、そんな綺麗事じゃないですよね。 

「はらぺこ」な欲望なんですから。

 

「ルベル」とは、りんご飴や唇や血液の "赤" (ruber) でしょうか、

誰かへの "反抗" (rebelle) でしょうか、隠された "裏側" (revers) でしょうか。

 

はっきり語られないまま、

奇妙にも「ルベル」の意味はゆらりゆらと揺れて、

「混沌」や「荒唐無稽」が色めきたつ「二十二時」。

 

そのとき語り手の視点は遠ざかり、

月下の「飢えた二人」を、冷静にひんやりと映し出します。

 

平然としたミクさんの声で、

遠くから眺めると、

 

そうやってお互いを求め溺れていく "はらぺこ" の二人は、

なんだかまるで獣みたいに感じませんか?

 

そんなモヤモヤとした不穏できみのわるい光景にこそ、

綺麗事じゃない、強烈な愛の予感がするのです。