~ 歌詞でよむ初音ミク 204-208 ~ シャボン / パペットダンス / おやすみシティガール / Wake me up / すこし歩く

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さて12年目のミクさんですが、12年というと、

今年で干支が一周回るんだなー、と気づきました。

す、すごい・・・!

 

当初の年齢設定は一応16歳だったので、

28歳のお姉さんになったとも言えますが、16歳のままとも言えるし、

というか実際のところ別に制約もありません。

 

このメイドミクさん (by moyionma) はちょっとお姉さん寄りかな?

では前回のつづき、いきます!

 

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204. シャボン(蜂屋ななし さん)

「貴方」はシャボン(石鹸)のような存在。不純で余計な「バイ菌」を全部洗い流してくれる人です。「僕」はそんな彼女を「頼り」、「救い」すら求めています。でも面白いことに、彼女はただ「純白」で「潔白」なだけではありません。実はどうやら彼女はさまざまな汚穢を背負っていて、それがむしろ純白さを大きくしているようです。ちょうど汚れれば汚れるほど、石鹸もたくさん泡立てなければならないように。「悲しみなど一つも要らない」という言葉は、悲しみに満ちているからこそ。繰り返す「純白のシャボン」の歌詞に、そういった裏表を感じながら聴きたいところです。

 

205. パペットダンス(Noz. さん)

「取っ替え引っ替え愛を振り撒いている」ミクさんは、しかし「声も届かないほどに耽溺」して「独り貴方を愛した」のでした。色目を使って悶絶しながら、「散々陽気なステップを踏んで」「クラクラするまで踊り狂った」といいます。それなのに何回やっても回れない、記憶も全部壊れちゃう。単に遊ばれているかのように、ひたすら終わりなくショータイムが続くだけ。パペットかマリオネットかはさておき、操り人形は人間のように回転できません。踊り狂うにも基本的な動作の「回ることができない」という人形の悲しみが、しょせん遊びというか、ニセモノでしかない愛の限界を示している気がします。

 

206. おやすみシティガール(yamada さん)

天気予報も信じないし、前髪を切った理由も聞かれたくない気まぐれなミクさん。空想のなかで映画のシーンが始まり、訳もなくパーティーを抜け出すような「夢見がちなオリーブ少女」です。とつぜん「洗濯日和ね」と言ってみたりして、歌詞もあっちに行ったりこっちに行ったりするのですが、それは彼女が「熱のない言葉に意味なんて何もないさ」と考えているからでしょうか。感じるままの熱量さえあれば、意味がないなんてそんなことどうだっていいわ、という風に。そんな彼女に、幸か不幸か「僕」はうっかり「恋」をしてしまったようですが、気まぐれな恋ゆえに終わりも予感していて、全体に儚さのアクセントが加わっています。

 

207. Wake me up(Broche さん)

待つだけじゃ何も変わんない、「空っぽの頭で踊ろう!」と呼びかける、わりとノーマルなメッセージソングかと思いがちですが、タイトルをみると意外なことに「Wake me up(起こして)」となっています。もしかすると、結末を考えない本当の "冒険" を求めながら、じつは怯えているのは彼女自身なのかもしれません。ぐうたらで無気力な女の子が、布団を抜け出せないままの日々のなか、自分を奮い立たせるために自分にエールを送っている、みたいなシーンを想像してみると、なんだかいっそう愛おしい奥行きを感じることができます。

 

208. すこし歩く(tezzy さん)

曲はもちろん、歌詞もふくめて小さな珠玉のような素敵な作品。「悲しいことがありまして」とちょっとユーモラスなミクさんは、「すこし歩く」ことにしたのでした。なんででしょうか?曲が進むにつれて、失恋らしきものがあったことが分かっていきます。つまり「気がすむまで」つれづれに歩いているだけで、それ自体には意味のない行為だったのです。だけど意味がないからこそ、彼女にとっては救いになっていて・・・。そんな構図自体がセンスにあふれてて、とぼとぼと歩くミクさんを想像すると、可愛すぎて切なすぎますよね。

 

(つづく)