~ 歌詞でよむ初音ミク 127 ~ しゅきぃぃ
かっこわるいけど、大好きなんだもん
R&Bテイストの「お洒落なミクうた」。とっても甘々な歌詞ですが、クールな音楽に乗せることで全体としてすごくかっこいいバランスになっています。曲・詞ともに100回嘔吐さんです。
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「君」への想いが、「もうどうしようもないくらいに」高ぶった女の子。
たぶん相手はお話したこともあるかないか、いつも「目で追ってる」存在。
でもこころのなかでは、「君のまるごと使って抱きしめてよ」と生々しく感じています。
それはもう、とにかく「こめかみの奥が火照る」ような気持ちで、
放っておいても勝手に「くらくらするほど」「涙が出るほど」で。
「抑えらんないくらい」の、その “好き” をすべて詰め込んで、
彼女は「しゅき」と表現します。「しゅきしゅき」「大しゅき」「しゅきぃぃぃぃ」。
笑われるかもしれないけれど、
「今更この気持ち誤魔化せない」のです。
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語彙、いわば単語にかんして、
わたしたちは普段、会話のなかでレベルを統一しています。
上司や先輩、また家族や友達など、場面に合わせて使い分けることはありますが、
使い分けたそれぞれの場面のなかでは語彙レベルを統一しようとするものです。
ところが彼女は、それをはみ出してしまいます。
「しゅき」すぎて、どうしようもなくなるのです。
急に赤ちゃんみたいに幼児化した言葉を発するのはかっこわるいことですし、
ましてこんなにお洒落でクールな音楽なのに、恥ずかしいタイトルにまでしちゃうのは、普通なら "もったいない" とさえ思うかもしれません。
でもその恥ずかしさ、かっこわるさをこそ描いているんじゃないでしょうか。
だって彼女、「まじで君にしか興味ないよ」。
自分のことなんか構ってられないのです。
自分のことなんか構ってられないから、「伝えたい」とか「振り向いて」といった自分への見返りも「望まない」なんて言えるわけで、
――「こんなの自分じゃないみたいだけどさ」、
自意識が引き剥がされるくらい、他人への想いが心を埋め尽くすようになったら、
それが本当の恋のあかしなのかもしれません。
でもいつかその想いを伝える日がきたら、
そのときは言い方には気をつけようね、ミクさん (笑)。