~ 歌詞でよむ初音ミク 166 ~ パステルカラーでもう一度
「もう一度」と歌う彼女はどんなひと?
ポップでとぼけた音から渋い低音までとても良質な渋谷系の一曲。そっと添えるように歌うミクさんですが、実はちょっと意外な歌詞を歌っています。曲は透さん、詞はyama。さん。表現の幅がほんとうに広く、さまざまなタイプの曲に出会うことができます。
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枯葉が散る季節になったのに、
なんだか明るめの浮いたコーデを選んでしまうミクさん。
「年甲斐もなく」恋にふれた彼女は、
そわそわと胸の高鳴りを抑えきれないでいます。
あなたに染められ、火をつけられ、
白いまどろみのなかへ・・・。
それは「性懲りもないトキメキ」だし、
いまさら「恥ずかしい」ことだとすら感じる彼女ですが、
それでもとめどない力に押されて、
「パステルカラーでもう一度」、素直に胸が騒ぐまま、
「少女」のような淡い恋へ身をゆだねるのでした。
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このブログをとおしてミク曲を聴いていると、
いろんな状況や感情をもつ語り手を描いた歌詞に出会うことができますが、
この曲のばあい、状況(空間)だけでなく、
年齢(時間)のほうにも工夫がある気がしました。
要するに、"ちょっとお姉さんなミクさん" です。
それなりに恋もして、
「もういいや」なんて言えるくらいの大人な女性で、
それなのに「指輪」にあこがれたり、
「密かな花言葉」を忍ばせるピュアな気持ちに戻っていて・・・。
その対比あってこそ、
季節外れのコーデに浮かれてしまう「少女」みたいな彼女の姿が
可愛く、そして切なく際立つのだと思います。
いわば "水平的な" だけでなく "垂直的な" 語り手の変形でしょうか。
たしかにVOCALOIDとは「人格のない声」、
というかもう少しわたしたちの実感に合わせて言うと、
「人格の制約がない声」なのですから、
人格がみえてしまう人間の歌い手とちがって、
年齢だって作品ごとにいろんな風に変えられるはずです。
そんな大切なことにもさりげなく気づかせてくれて、
それでいてさらっとしている素敵な作品だなぁと思いました。