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~ 歌詞でよむ初音ミク 47 ~ エイリアンエイリアン

2016年の曲

幾重にもかさなった「エイリアン」の恋

「VOCAROCK」タグ。強調されたベースやハイハットなどが宇宙人の襲来を告げるようで、追いたててくるような格好良さがあります。殺伐とした突き放した感じと、どことなく漂う滑稽な雰囲気が素敵なバランスの作品。曲・詞ともにナユタン星人さんです。

 

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「ココロは恋を知りました」。

それは、唐突に始まった恋心。彼女にとっては異星間の交信でした。

 

いわく、これまではまるで宇宙の迷子だった2人が、

ついにいま遭遇(コンタクト)したのだ。「ナニカが起こる胸騒ぎ」がする、と。

 

そして「エイリアン わたしエイリアン」と称しはじめる彼女。

恋のちからにほだされて、「あなたの心を惑わせる」「あなたに未体験あげる」ことができるような気がするのです。あたかもあらゆる手管を使って「あなた」を篭絡してみせると言わんばかり。

 

たしかに、エイリアンと聞くと例の映画のような「特殊な能力」を連想します。

ただしもともとのalienという言葉とは、何か特定の生物を指すのではなく、

「よそもの」(外国人・異星人)という相対的な概念なのです。

“別名”のことを”alias”(エイリアス)と言うのと同じ。

 

面白いことに、彼女は「わたしエイリアン」「あなたのエイリアン」と、「あなた」を基準にしています。つまり彼女の「エイリアン」という言葉には、恋の異質な能力だけでなく、自分を相対化した「よそもの」感も含まれているのかもしれません。

 

実際、たしかにどうも彼女の恋はうまくいっていません。

「タイトロープ(綱渡り)」に始まり、「重度のディスコミュニケーション」。相手の「瞳に映らない引力」にヤキモキし、「降りそそぐ無数の隕石」に襲われ、「気づいてよ」と心の叫びを発してみたり。彼女は「あなた」にとって「エイリアン」のままなようです。

 

さらに、「よそもの」感といえばもう一つ、

ほかならぬ彼女にとっての”自分自身”というのもある気がします。恋のせいで異常な心理状態に陥っているのですから。

 

「振れる感情」に、眼光は「赤色にキラキラ」。宇宙の引力を感じ、光がゆらぎ明滅する幻惑のなかで、恋の「超常な混沌」があなたを襲うと信じこみ、まるでグリモワール(魔術書)のように「ひとりきり夜な夜な空想描く」すがた。

創造した「現実」を盲信する症状、それに感応してしまう本能に、もう「高ぶる気持ち抑えられない!」。おかしいな、そんな自分のすがたも「エイリアン」・・・。

 

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何重にも折りかさなる「エイリアン」になってしまった彼女の、

自分でも戸惑うくらい切なくも滑稽な恋の混乱ぶりが可愛らしいです。

攻めているようで、追いつめられているような。

 

ところで最後に、彼女はそんな気持ちにさせる「あなた」だってエイリアンに違いないと言い出します。「あなたは未確認生命体」。”よそもの” 同士の妙なシンパシーを持たれ、「あなた」まで勝手に「ふたりはエイリアン」とされてしまうのです。

 

冒頭で、「宇宙人の襲来」だとか「突き放したような」曲調と書きましたが、

もしかして音楽のほうは、そんな不安定な彼女を一歩引いて見ている「あなた」側の視点かもしれない――なんて思ったり。

 

だとしたらこの曲調は、彼女のことをどう思っていることになるのか・・・。

色んな想像をしながら聴ける一曲です。