~ 歌詞でよむ初音ミク 46 ~ Constellation

(※音量ちょっと大きいので注意。サンクラに飛べば調節できます)

知られざる、もうひとつの英語ミク曲の名作

去年のこと、日本や北中米そして台湾を回るMiku Expo 2016にむけて、ライブモーション化する楽曲を選ぶコンテストがありました。みごと優勝されたのは有名なCircusPさんで、『Ten Thousand Stars』という作品でした。ダークで引き締まった素敵な曲です。

 

ところで、このコンテストには幾つか次点の作品も選ばれたのでした。

今回はそのうちの一つ、The Orkestrateさんの『Constellation』という曲を取り上げてみようと思います。ロマンチックかつハードな、ものすごく心地の良いEDM系ミクノポップです。

 

(↓ こちらはご本人から感謝の意を込めて、2016年8月に公開されました)

 

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地球から何光年もの彼方にあった星のおはなし。

 

彼女は広大な宇宙の片隅で、誰にも見つけてもらえずひとり輝いている恒星です。

いつか名前をつけてもらえるのを待っていました。

 

そこに通りかかった彗星。彼が「涙を拭きなよ」と声をかけました。

「宇宙には幾千の恒星があるけれど、だからって君の光の代わりにはならないよ」。

 

名前はなかったものの、たしかに彼女は自分の光の足跡を残していました。「僕たちのpaths(通り道)が、夜空に模様をつくるから」、と彼は言いました。それが、夜を照らすConstellation(星座)になるんだよ、と。

 

残された光のあとを追っていくと、

そこには昼間のように明るく輝く星の群れがありました。

いろんな星が腕を組み、それぞれのしるしをかたち作っているのです。

 

彗星は言います。「目を開けてごらん。何が見える?」

彼女は答えます。「銀河がわたしを見つめ返しているわ」

 

本当は、その星座だって、宇宙のなかに偶然に散らばっただけの「ランダムな点」でしかありません。だけど「あなたと私のなかではシンクロして踊っている」ような気がしたのです。

 

光を残すこと。

その光の通った道さえあれば、”しるし”を見つけ、名前をつけることができる。

そして今度は彼女が、自分の光を振り返って、「目をあけてごらん」「何が見える?」と問いかける番なのです。

 

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普遍的な青春の歌としても、恋愛の歌としても、あるいは楽曲コンテストそのものの歌としても、世界に出ていこうとするミクさんの歌としても、

なにより、クリエイター自身の歌としても聴くことができます。それでいて英語(ゲルマン諸語)特有の母音弱化や子音の脱落で、音韻的にも本当に気持ちのいい歌詞になっています。

 

ただし、ひとつだけ。実は「星座」とはすべて恒星(たとえば太陽)のことです。

彗星の残す光(本当はガスや塵の反射)は、近くにいる者にしか見えません。

何光年も離れた者にとどく光は、恒星だけが有しているのです。

 

それは残酷な事実です。

もしかすると彗星はそのことを知っていたのかもしれません。

だからこそ彼女に近づいたとき声をかけたのでしょうか。

 

光を放つ才能を与えられた者は、足跡を残すべきだ、と。

たとえいまはそれがどんな模様になるのか分からなかったとしても。

 

図らずも、それはわたしたちがクリエイターの方たちに託す願いでもあるのです。