~ 歌詞でよむ初音ミク 73-79 ~ ミク視点のVOCALOIDイメージソング (1)

この8月31日でミクさんが9周年を迎えます。

そこで、このブログでもささやかながら何かできることはないかと考え、以前にもどこかで書いたとおり「VOCALOIDイメージソング」を振り返ることにしました。

f:id:comaa:20160827232936p:plain

 

VOCALOIDイメージソング」とは、VOCALOID自体をテーマにした曲のことです。

ですから、曲のジャンルではなく歌詞の内容によって分類されるのですが、じつは少しややこしいんです。

 

ひとえにVOCALOIDをテーマにした曲、といっても、

歌詞から見てみると、「ボカロP側の視点」や「ミクさん視点」があったり、「VOCALOIDとは何か」を語る曲もあれば、「VOCALOIDの気持ち」を歌う曲もあったりと、千差万別いろいろな下位区分があるからです。

 

というわけで今回は、VOCALOIDをテーマにする作品のなかで、

「ミクさん視点」「シチュエーションが見える曲」というフィルターをかけてみることにしました。そこにわたしの趣味も合わせて、数回つづけて振り返ってみようと思います。

「シチュエーションが見える曲」については、このブログの方針とも近いのですが、VOCALOIDについての考えや主張を前面に出して直接的に歌ったメッセージソングというよりは、その場面でミクさんがどんなふうに生かされているかが想像できるような曲、ということになります。

 

なので、大好きな曲や有名な曲だけど今回は扱わないといった、自分ルールに自分で縛られるおかしな状況になることもありますが、おゆるしください。 

 

73. 私のマスタ―ど素人 (かちゅぜちゅぴーさん)

 ギターとベースの区別がついてないような音楽の「ど素人」に買われてやってきたミクさん。芸能人はファンを選べないとはよく言いますが、ソフトウェアであるミクさんの場合はプロデューサーも選べません。テンポが違う、音程もおかしい、発声練習ばかりで「まともなメロディ 歌いたい」彼女は、それでもけっしてマスターのことを馬鹿にしません。圧倒的な無力さと引き換えに、彼女が示すのはとぼけた優しさです。

 

74. みくぶる2 (ringoさん)

 「いやらしいあんな言葉」ばかり歌わされているミクさんの愚痴。何を言わされているのかは分かりませんが、我慢して忠実に歌っているうちに疲れてしまったようです。厄介なのは彼女自身「卑猥な子」になってきた気がすることだそうで、逃避するように酒に当たっています。境遇の悲哀を歌うのはまさにブルースですが、ミクさんらしいのはそのまま酒に飲まれて、呂律が回らなくなりながらラーメン屋のことへと思いが移っちゃうところです。

 

75. 8月の花嫁 (OSTERさん)

 マスターとミクさんの関係を、新婚生活のように描いた作品。まったく一般の曲としても聴ける曲でありながら、ミクさんの誕生日が8月ということで彼女が歌うとボーカロイドの歌になる妙技です。恋のさなかの「チョコレートみたいに甘い夢」とは少しちがって、「もっともっと強い絆で結ばれてるよ」という落ち着いた愛を歌っています。歌の練習を一生懸命しながらマスターと対話するじゃじゃ馬なミクさん像を作り上げたOSTERさん自身の『恋スルVOC@LOID』の1年後だという事を踏まえるといっそう感慨深いものがあります。

 

76. あなたのメロディ♪ (ミドうさぎさん)

 お風呂での鼻歌を録音したような雰囲気がおもしろい一曲。ルカさんもコーラスで参加してるので、どうやらいっしょにお風呂に入っているようです。受けを狙って背伸びしたり気取った歌を作るマスターに対して、「その歌、ホントに、あなたの心?」と問うミクさんは、技術やセンスが無くても「あなたのメロディ」を擁護しています。いわゆる”偉大なるアマチュアリズム”であり、そのツボを決して失わないのがミクさんですが、その舞台がお風呂というのがなんとも気の抜けた良い感じです。

 

77. ゼンマイ仕掛け (うしろめたさPさん)

 わたしたちに触れることはできないと悟って、手を引っ込めたミクさん。その代わりに画面や次元の向こうで、ためらいながら声を届けようとしています。春の風に消えいってしまいそうな儚さのなかで、彼女がわたしたちにそっと置いていくその声は、一種の痕跡のようなものです。声となって現われて、姿を消す――「忘れないでね 私がここに居たこと」、まさにそうした足跡のようなミクさんのあり方が歌われています。

 

78. 私の時間 (くちばしPさん)

 スーパーアイドルを目指して歌の練習をしているミクさん。練習中のマスターとの戯れがとても可愛いです。ちょっとアホっぽい感じ、無邪気な明るさが詰まっていますが、「もしも完璧になったら レッスンはそこで終わりだよね」というジレンマのような切なさもあります。家族のいない彼女は、だからこそ不特定の誰かのために歌っているのだという言葉は何気ないから余計に悲しくて、逆にその付き添い人としてのマスターの優しさにも目がいくような作品になっています。

  

79. ぐで☆Girl (GonGossさん)

 「面倒なのはキライ 何もしたくはないの」という、ぐでぐでしてるぐうたらガールのミクさん。風まかせで流れ流れて、桃源郷に着いたらいいな、なんて都合のいいことばっかり考えながら、「明日はGood day 間違いないから」とかノーテンキなことを言っています。「でも余裕があれば」、マスターを応援してあげるそうです。健気なミクさんとは対照的に、軽い気持ちで付き添ってくれる、そんなスタンスのミクさんもすごくいいと思います。