~ 歌詞でよむ初音ミク 163 ~ PortaMystica

「神秘への扉」をひらく言葉

美しい弦楽器のカルテットのなかで、空から舞ってくるような声のミクさんが歌っています。ゴテゴテした感情がないところが、まさに人ならざる天使。「時ノ計劃」というサークルさんの作品です (この曲はふぁふぁさん、詞は月光蝶さん) 。

 

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 「ポルタミスティカ」、

ラテン語で「神秘の扉」というタイトルですが、

どういう意味なのでしょうか。

 

この曲で、彼女が歌っているのは

「音楽」についてです。

 

音楽って不思議なもので、

それ自体は "言葉" でも "映像" でもありません。

 

意味やデータのある "情報" でも "メッセージ" でもなくて、

音の流れやリズムを追いかける、なんとも不思議な状態です。

 

それは言ってみれば「神秘」的な、

言葉にできない「恍惚」みたいなものです。

 

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これに対して「言葉」(歌詞) には、

意味があるし、映像を浮かべたりもします。

 

考えて、理解しようとするのは

「恍惚」や「神秘」とはちがいます。

 

だからもしもこの曲が「神秘そのもの」を歌っていたら、

スキャット架空言語を使っていたかもしれません。

 

でもこの曲は「神秘そのもの」じゃなくて、

「神秘の "扉" 」を歌ってるんじゃないでしょうか。

 

――「まっさらな五線のうえで ささやきは歌にかわる」。

そう、言葉は変質するんです。

 

まさに同じ「言葉」というものが、

ささやきや呟き (意味や情報) から、歌や音楽に変わるという不思議。

 

そういう意味での「神秘への "扉"」が開く、

そんな瞬間をこのミクさんは歌っている気がするのです。