~ 歌詞でよむ初音ミク 161 ~ ブルーベリーガール

見え隠れするマゾヒズムの入り口

「お洒落なミクうた」タグ。ファンクで流れるような音楽が、ものすごく不安定に傾きかけつつも、ポップに収まっていく中毒性がある作品。とってもかっこいいです。曲・詞ともに、吉田ヨシユキさん。

 

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妖しいかたちに熟れたブルーベリー、

「瑠璃色をしたその果実」のような「君」。

 

「慈愛に満ちた表情」や「あざとい仕草」を見せながら、

「甘い甘い君の言葉」がしたたり落ちていきます。

 

ときどき見せる「したり顔」で、

「あれはわざと」だと分かってるのに、

 

「零れ落ちる果汁」、「君の全ての仕草」が

「僕の脳裏に焼き付いて離れないよ」。

 

「ひょっとして この気持ちは甘い甘い恋心」、

いわゆる「恋の病」というやつなのでしょうか。

 

はっと気づいた瞬間、

「容易く惹かれてく単純な僕」は、

「君の瑠璃色に汚れた手」を「サッと取って 指を深く深く絡ませ」ていました。

 

でも、「そう これは君のせいだ」。

そうやって「恋の病」の原因を、

あまりに甘美な彼女のせいに「押し付け」るのでした。
 

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この曲の主役は、

ブルーベリーガールな「君」です。

 

語り手は「僕」なのに、ぜんぜん主導権がありません。

 

というか、おもしろいことに、

語り手なのに、主体性を避けているみたいです。

 

他人事みたいに「君を嫌いになれないようで」と言ってみたり、

こんな気持ちになるのはぜんぶ「君のせいだ」と「押し付け」たり、

恋の病が「自然治癒する」のを待ってみたり。

 

ほんとうは、

彼にだって自分のドロドロとした欲望はあるんです。 

 

最後には我慢できなくなって 

「(彼女の) 手をサッと取って深く深く絡ませ」るわけですから。

 

それなのに欲望をはぐらかそうとする「僕」は、

じつは自分の欲望を、他人に転嫁して満たしてもらおうという、

ほのかなマゾヒズム心理を抱えているのかもしれません。 

 

そんなわけで、この曲、

"悪女にハマって溺れてく" だけの一筋縄ではいかない気がします。

 

「容易く惹かれてく 単純な僕」を演じることで、

むしろ自分の思いどおりに自分を全面的に支配してほしい、的な。

 

そう思って聴いてみると、ちょっとゾクっとしたり・・・。

うーん奥深い世界です(笑)