~ 歌詞でよむ初音ミク 187 ~ 小生信者は雨の温度も知らず
エゴイストの孤独な葛藤
一見レトロな曲調ですが、上下する意外なメロディーに揺さぶられる作品。ちなみに小生とは、へりくだって言う「自分」のことです。曲・詞ともに雨の介さん。
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「けしからん時代だ...!」と
朝から晩までニュースに愚痴っている「御父さん」。
綺麗事で優しさの体裁をとりつくろう
お金目当ての「御嬢さん」。
希望も妄想も捨てきれないまま
涙目でうろたえている「御兄さん」。
みんな自分の立場を守るばっかりで
「生きてくだけ、ただそれだけ」。
そんな彼らにむかって
「狂った」ようなエゴイスト(小生信者)の叫びは、
街を切り裂こうとします。
――ぜんぶ捨て去って、血痕まみれの部屋で生きるべきだ
――「官能菩薩」のような不謹慎なタトゥーを恥部に掘れ
――もっと支離滅裂で「サイコーな」貴方に会いにいこう
ですが、何万回言っても届くことはありません。
「なるほど 僕はひとりだった」のです。
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なぜ「僕」は "エゴイスト" を自称しているのに、
自分(エゴ)を守って生きている人たちを動揺させ、
「切り裂く」ようなことを言うのでしょうか。
もしかすると、本気でエゴイズムを貫くというのは、
もっとヒリヒリするようなことであって、
ちまちまと「箱の中」で自分を守って生きていくことだとか、
細々と「誉められたい」承認欲求を満たすことでは決してない、
・・・ということなのかもしれません。
うまいこと環境に順応するのとは真逆で、
「雨の温度も分からない」ような生き方。
でも、だからこそ「ひとり」になってしまうわけで・・・。
機械的に尖った声のミクさんは、
そんなサイコパスぎみな葛藤を悲しく体現しているようにも感じます。