~ 歌詞でよむ初音ミク 113 ~ 台風コロッケ
いけないことと言われればなおさら
「素朴なミクうた」タグ。またまた大きな台風がやってきました。今年は台風がたてつづけな気がします。まったり穏やかなミクさんと、アコギの優しいアルペジオの音色がすごく相性のいい作品。曲・詞ともに、ほぼ日Pさんです。
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テレビの天気予報に、胸がざわめいているミクさん。
彼女の町に、大きな台風が近づいているのです。
もちろん災害につながることだから、「いけないことだと わかっているけど」、
でもなんだかドキドキするような「待ち遠しい」気持ちがあるのも確かで、
コロッケをたっぷり買い込んできて、「朝まで 中継楽しむの」。
それが彼女にとっての ”台風コロッケ”。
雨合羽をきたアナウンサーさんが、現地中継にいそしんで、
暴風雨に飛ばされびしょびしょになりながら一生懸命リポートしているのを見ると、
その大きな台風が、自分の町にもどんどん近づいてくるのがいっそう感じられて、「気持ち高ぶってく」のです。
「いつまでも食べたい」、「食べだすと止まらない」。
次第に強くなる雨音を聴きながら、「テレビに釘付けで」、彼女は台風コロッケの時間をほくほくと楽しむのでした。
台風コロッケは、もともとはネットから生まれた現代日本の風習なのですが、
誰しもが感じたことのある台風上陸まえの楽しみを、一人の女の子がひっそりと歌っているような内容に組み替えたことですごく可愛い曲になっています。
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でもね、この曲にはギミックがあると思うんです。
元ネタの台風コロッケは、”お昼” の出来事でした。つまりワイドショーや夕方のニュースで流れる色んな中継を見ながら、コロッケを食べるということです。
でもこの曲では ”夜” の出来事となっています。
そして「朝まで台風の 中継楽しむの」。
ですから、ワイドショーや夕方のニュースのワイワイガヤガヤてんやわんやの雰囲気、というのはちょっと違ってきます。
彼女のは、密やかな楽しみなのです。「いけないことだと わかっているけど」。
だからこそ ”深夜” という設定にも関係があるのでしょう。
ここでのミクさんはひっそりと台風コロッケを楽しんでいるのであって、そこには一人ぼっちの孤独な静けさが裏腹に伴っています。
「いけないことと言われればなおさら」ワクワクしちゃう気持ち、
そういうちょっぴりイジワルで野次馬的な気持ちは、他人に嬉々として語ることじゃないけれど、胸のうちにはみんな誰しもが身に覚えのある感情です。表立っては言いませんが、みんな同じだということをこっそり感じられるのが深夜の台風中継であり、だからこそコロッケを食べながらいつまでも見ていたいと思うのかもしれません。
台風のときはコロッケ食べたいよね!分かるよね!と歌うだけの曲というよりは、
「私だけじゃない」という言葉が出てくるとおり、
やましい気持ちを共犯するひっそりとした連帯感として、深夜の台風コロッケが歌われているような気がするのです。