~ 歌詞でよむ初音ミク 157 ~ ぬかしおる

 なぜ「ぬかしおる」と言いたいの?

「VOCAROCK」タグ。キャッチーなギターロックなのに、ものすごくひねくれた歌詞をうたうミクさん。ちょっと舌足らずな可愛さもあるので、かわいい卑怯者としてネタ的にうまく中和されています。曲・詞ともに、akiwoさんです。

 

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「一人で十分」だとか、
「気持ちは負けてない」とか、
 
「君のためならボクは 死ねる」とか、
「二次元の美少女が 好き」とか、
 
なんでもかんでも、
いちいち「ボク」に言ってくる「アイツ」。
 
しかも「ドヤ顔」で、「したり顔」で、
「半笑い」しながら、「自慢げに話す」アイツ。
 
だけど、「ボク」は決めています。
 
アイツの言うことなんて、
「右から左に流して 聞いてるフリをして」、
「最高のタイミング」で、言ってやろう。
 
「ぬかしおる」、と。

 

あぁアイツの前で、「この言葉を言いたい」。
「今すぐ口にしたい 」「何度も口にしたい」。
 
「ぬかしおる」、と!
 

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元ネタ自体は別として、

この曲における「ぬかしおる」は、かなり悪意があります。

 

たったひとこと言うだけで、

相手から一気に距離をおき、そして見下せるマジックワード

でもそんな鬼畜な悪意っぷりがおもしろいです。

 

ところが、

この「ボク」、ちょっと弱みも見せているんです。

 

「次からちゃんと聞くから 今はちょっとふざけさせて」。

 

あれ? と思いませんか?

 

もしかして彼は心底バカにしているというより、

あくまで一時しのぎ、ある種の防衛として、

「アイツ」に距離をおき、見下そうとしているのかもしれません。

 

でもそれじゃ、何から身を守っているのでしょうか。

 

よくよく考えてみると、

「ボク」には、「ぬかしおる」以外の自分の主張がほぼありません。

自分のエピソードも、 自分自身のメッセージもありません。

 

じつは、この歌をうたっているのが、

"できることもやりたいことも何も見つからない「ボク」" だとしたら、

 

少しイタいけど人生が楽しそうな「アイツ」に、

せめて見下されないための( "明日はデートなんて ぼっちにぬかしおる" 

悲しい予防線のような気もしてくるのです。

 

自分の精神バランスを保つために、

本人も自覚しながら「今はちょっとふざけさせて」と言ってるなら、

まぁ迷惑ですけど (笑)、ちょっと切ないですよね。