~ 歌詞でよむ初音ミク 158 ~ ひとり水族館

「永遠に交わることのない」隔たりの場所

「切ないミクうた」タグ。澄んだ水槽のなかを思わせるような音楽に、少しこもった声が彼女の閉塞感を感じさせる作品。曲・詞ともに、げろげろさん、さんです。

 

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「あなたとの約束 すっぽかして」、

彼女が「逃げ込んだ」先は、「水族館」でした。

 

そこにいたのは、

「名前も知らない 無数の魚たち」。

 

その姿を眺めていると、

なんだか悲しくなってきます。

 

「同じ空間 共有してるけど」、

「アクリルガラス」の「見えない壁」に隔てられていて。

 

向こう側にあるのは「違う世界」。

「永遠に交わることのない 互いの世界」。

 

この魚たちと、「わたし」は、

「同じ場所じゃ 息もできない」のです。

 

大きな水槽に満ちた「アクアマリンの透明な青」が、

どっと彼女の「感情に流れ込み あふれだした」気がしました。

 

「あなた」との関係も、きっとこれと同じ。

 

それなのに「透明な壁」の向こうには、

「触れられないあなたの世界」が見えてしまうから、

「やりきれない」わけで。

 

 こんな「ガラス越しの世界」で、

「ふたり 生きていけるのかな」 ・・・。

 

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この「透明な壁」は、

たぶん乗り越えられません。

 

「同じ場所じゃ 息もできない」からです。

 

ただ単に息苦しいだけじゃなく、

「水族館」の魚と人間のように、

まったく生きるべき場所がちがうのです。

  

すでに「同じ空間」を「共有してる」二人なのに、

「永遠に」分かりあえないという絶望感。

  

でも、かといって失恋ソングでもなさそうです。

 

「それでもなお」彼女は、

"ふたりで生きていけるだろうか" と考えていますから。

 

そこがすごく面白いところじゃないでしょうか。

 

よくある歌詞のように、

壁を乗り越えようとする (恋の悩みパターン) でもなく、

壁を越えられなくて負ける (失恋系パターン) でもなく、

 

壁のなかで他人と生きていくという、

すごく大人でリアルな苦い感情を歌っているような気がします。

 

たしかに水族館って、

海の生き物との "出会い" の場所だと思ってましたが、

どこよりも "隔たり" を感じさせる場所でもあるんですね。

 

着眼点をかえれば、

水族館もこんな歌詞にできるんだなぁ。