~ 歌詞でよむ初音ミク 162 ~ never ender
「円になって全て繋げてく」 から 「深く散らばった音」 へ
ボカロPだけでなく楽曲提供やDJなどで世界的に有名になった kzさん。今回は彼自身にとってのVOCALOID10周年を飾る一曲になっています。新しいサウンドだけでなく、歌詞の面でもこれまでと少しちがった印象を受ける作品です。曲・詞ともに、kzさん。
**********
穏やかな優しい声で歌うミクさん。
「僕」にとって特別なのは「今日」、
「君」にとって特別なのは「明日」。
それはつまり、
ぜんぜん分かりあえないということでもあるんだけど、
べつに悲しいことじゃないんです。
わたしたちは「深く散らばった音」のようなものだから、
「君がどこにいようとも」、たとえ「君が気づかなくても」、
どこかで誰かが「鳴り続いてる」はず。
だとしたら、
自分だって誰かにとってはそうかもしれなくて、
「なんでもない」つもりのことが、
「誰かの大切なもの」になるかもしれない。
だから「歌を歌おう」、と彼女は呼びかけます。
ときには「声が遠くなっても」、
そうやって誰かの「音は続いてく」のですから。
**********
わたしにとって「特別」な日が、
あなたにとって「なんでもない」日だったりすること。
人によったら "分かりあえない" と寂しがるかもしれないけど、
わたしはその "すれちがい" こそ不思議で、とっても好きなんです。
ものすごく悲しいことがあったとき、
世界がぜんぶ真っ暗じゃないから救われた気持ちになったり、
枯れ果てて砂ばっかりだと思っていた場所に、
見えてなかっただけの生命がたくさんうごめいていたり。
まるで、"すれちがい" のおかげで、
わたしたちの遠く、静かなつながりを感じられるような気がして。
**********
kzミクさんは、『Tell Your World』や『Hand in Hand』など、
「つながっていく」コミュニケーションについて歌ってきました。
でも彼にとっての10年間のあいだに、
「散らばっていくこと」(その先で静かに呼応しあうこと)
というコミュニケーションのあり方も見つけたのかもしれません。
それはちょうど10年前に、
誰かをもとめて「届いているかな」「響いているかな」と
歌いはじめた彼女の姿に少し似ているのですが、
「君が気づかなくても」・・・と歌える今は、
ずっと大人で、ちょっとビターで、でももっと深くてロマンチックです。
そんな新しい展開をみせるkzさんとミクさんの音楽に、
なんだかとても心を動かされたのでした。