~ 歌詞でよむ初音ミク 162 ~ never ender

「円になって全て繋げてく」 から 「深く散らばった音」 へ

ボカロPだけでなく楽曲提供やDJなどで世界的に有名になった kzさん。今回は彼自身にとってのVOCALOID10周年を飾る一曲になっています。新しいサウンドだけでなく、歌詞の面でもこれまでと少しちがった印象を受ける作品です。曲・詞ともに、kzさん。

 

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穏やかな優しい声で歌うミクさん。

 

「僕」にとって特別なのは「今日」、

「君」にとって特別なのは「明日」。

 

それはつまり、

ぜんぜん分かりあえないということでもあるんだけど、

 

べつに悲しいことじゃないんです。

 

わたしたちは「深く散らばった音」のようなものだから、

「君がどこにいようとも」、たとえ「君が気づかなくても」、

どこかで誰かが「鳴り続いてる」はず。

 

だとしたら、

自分だって誰かにとってはそうかもしれなくて、

 

「なんでもない」つもりのことが、

「誰かの大切なもの」になるかもしれない。

 

だから「歌を歌おう」、と彼女は呼びかけます。

ときには「声が遠くなっても」、

そうやって誰かの「音は続いてく」のですから。

 

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わたしにとって「特別」な日が、

あなたにとって「なんでもない」日だったりすること。

 

人によったら "分かりあえない" と寂しがるかもしれないけど、

わたしはその "すれちがい" こそ不思議で、とっても好きなんです。

 

ものすごく悲しいことがあったとき、

世界がぜんぶ真っ暗じゃないから救われた気持ちになったり、

 

枯れ果てて砂ばっかりだと思っていた場所に、

見えてなかっただけの生命がたくさんうごめいていたり。

 

まるで、"すれちがい" のおかげで、

わたしたちの遠く、静かなつながりを感じられるような気がして。

 

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kzミクさんは、『Tell Your World』や『Hand in Hand』など、

「つながっていく」コミュニケーションについて歌ってきました。

 

でも彼にとっての10年間のあいだに、

「散らばっていくこと」(その先で静かに呼応しあうこと)

というコミュニケーションのあり方も見つけたのかもしれません。

 

それはちょうど10年前に、

誰かをもとめて「届いているかな」「響いているかな」と

歌いはじめた彼女の姿に少し似ているのですが、

 

「君が気づかなくても」・・・と歌える今は、

ずっと大人で、ちょっとビターで、でももっと深くてロマンチックです。

 

そんな新しい展開をみせるkzさんとミクさんの音楽に、

なんだかとても心を動かされたのでした。